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Road : つれtakeロード

 

京都

 2018年も終わりに近づく頃、宮島永太良が向かったのは京都市の一角。 今回は宮島が特に思い入れのある鴨川の東側の地区をレポートしたい。

 京都といえばやはり寺社仏閣。そうしたわけでまず向かったのは京都市山科区にある日蓮宗の大本山「本圀寺」。 ここは京都地下鉄の御陵駅近く、小高い山を登って森閑とした空気の場所にある。

日蓮宗の大本山 本圀寺

日蓮宗といえば山梨県の身延山久遠寺が有名だが、そちらが「東の祖山」と呼ばれるのに対し、この本圀寺は「西の祖山」と呼ばれる。 日蓮が鎌倉時代、鎌倉に構えた法華堂に始まり、光明天皇より地を賜り京都六条へ移転。その後は現在の山科の地へ移った。

 宮島が初めてこの寺院を訪れたのは今から25年ほど前であるが、その頃はこの寺が修復されたばかりで、まだ金色を基本にした配色が多く、伽藍配置も現在と若干異なっていた。 やはり寺院といっても時代とともに変わり続けているということだろう。 静かな山の中で、荘厳な山門と、そのすぐ前にある真紅の繊細な橋桁も、対照的な風景として印象深い。

参道

 先に挙げた御陵駅は、天智天皇の山科御陵がここにあったことから付けられた名前だが、この駅からあえて地下鉄に乗らず、次の蹴上駅まで行く道は、ちょっとしたハイキングコースとしても面白い。 まっすぐ歩いて行けばそのまま三条通・三条大橋に行きつく。 途中には、毎年春につつじの開花を一般公開する蹴上浄水場が見える。 また、三条通から分かれて白川通りに入る所には、京都発電所がある。 明治時代に開通した琵琶湖疏水のために建設された我が国初の水力発電所だが、煉瓦造りの豪華な洋館のようで、一見、発電所とは思えないのが特徴である。

 そしてここを進めば右手は南禅寺だ。 この寺院は臨済宗南禅寺派大本山。 重要文化財である三門が印象深いこの寺は、後嵯峨天皇が1264年に造営した離宮が前身となる。 現在は最も地位の高い禅寺である。

方丈庭園

 この寺の入口付近および境内には「琵琶湖疏水」の水路がいくつか見られる。明治時代、人口の減少した京都の新たな経済政策として、琵琶湖の湖水を京都へ流すため、当時としては屈指の技術を用いて作られた水路である。 この南禅寺の入口にある「蹴上インクライン」も現在残る水路の一つで、その距離は圧巻である。

 また、南禅寺といえば湯豆腐が有名だ。参道にもいくつもの湯豆腐専門店が軒をつらねている。 たっぷり火を通した豆腐にネギと生姜を添え、ポン酢に浸して食べる。 このシンプルな方法が一番湯豆腐を美味しくさせると思うが、いかがだろうか?

 そして南禅寺を出てから徒歩でほんの数分行くと、京都市動物園に行くことができる。 こじんまりした動物園ながら、哺乳類を中心に、爬虫類、鳥類なども見られ、また観覧車や豆電車など、ちょっとした遊園地機能も備えている。 この動物園で今最も注目されているのは、「ナイル」と名付けられた長老の雄ライオンのである。 一般的にライオンは10年くらいの寿命とされるところ、このナイルは25年も生きているという。 人間でいえば160歳くらいに相当するだろうか?

京都市動物園

 さすがに近年はその年齢もあり眠っている時間もめっぽう多いそうだが、この日ななんと起きていた!  しかも「ゴォー!ゴォー!」と元気な声まで出して闊歩していたのだから、貴重な場面を見ることができたと言える。 尤も数分後、また眠りについてしまってはいたが。

ライオンと猿 場外の商店
シマウマとマントヒヒ

 場所は京都駅からさらに南方へ移動する。 東大路通沿いの、京都の日常を垣間見るような趣ある商店街から奥に入ると、そこには真言宗泉涌寺派総本山・泉涌寺がある。 この寺院は、皇室の菩提寺「御寺(みてら)」として知られている。 鎌倉時代の後堀河天皇、四条天皇、また江戸時代の後水尾天皇以下幕末に至る歴代天皇 の陵墓が存在するのだ。

 山門を入り、本堂へと続く参道は、緑に囲まれて荘厳な道である。 神仏をまつる場所ではよく見る景色だが、神仏とはこうした緑を通じて存在を示しているのではないかとあらためて思う。 ゆっくりと深呼吸をしながら歩きたい。 そしてこの泉涌寺の至近距離には、宮島永太良が長年交流を持っている先輩画家・加藤力之輔氏がアトリエを構えている。

加藤氏のアトリエ

 宮島はこの日、京都に移ってからの加藤氏のアトリエをはじめて訪れたが、互いに以前ここで会話したことがあるかのような錯覚にとらわれるほど意気投合していた。 各部屋には加藤氏がスペインで画業を積んでいたこ頃の作品、スペインをモチーフにした作品が並び、京都の中で、ひと時の南欧の風を感じさせてくれるようだ。

加藤氏と

 また、京都や鎌倉に取材した日本のモチーフの作品も興味深い。 以前に住んでいた人の趣味ということで、母屋の一部には茶室も設置されているが、この場所でいただくお茶は、味覚だけでは言い尽くせない、五感を癒す特別な感覚がある。

 今後も精力的に制作活動を続けていかれるであろう加藤氏の作品・創作姿勢に感化されながら、宮島永太良も2019年にむけて、新たなる創作のエネルギーを得てきたように思う。

(文・写真 宮島永太良)

 
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