TOPRoad : つれtakeロード

Road : つれtakeロード

 

上高地

都会では暑さの続く8月上旬、宮島永太良は長野県西部にある上高地を訪れた。北アルプス南部・穂高連峰の中腹に位置し、梓川を中心に広がる日本きっての名勝である。地域・行政としては松本市に属するが、標高1500m、そして前後約10km、幅最大約1kmの堆積平野である。(ちなみに富士山の高さは3776m)この標高でこれだけの平坦な地は日本では他にない。

上高地

上高地という地名の語源は「神垣内」であり、同じ長野県の安曇野にある穂高神社の祭神・穂高見命(ほたかみのみこと)が下りて来た地という意味があるようだ。そんな伝説も彷彿させるかのように、梓川沿い周辺はとても神秘的に感じる。早速、その梓川にかかる上高地の花形・河童橋から巡ってみる。
この橋は1891年 (明治24年)に架けられて以来、何度か架けなおされているが、1997年(平成9年)に5回目に架け替えられたものが最新である。多くの観光客が、この渡るだけで楽しい橋を行ったり来たりしている。また橋の下では、家族づれなどが涼しい水に足をつかって楽しんでいる。

上高地

上高地の中心を流れる梓川の水は大変綺麗で澄んでいる。近隣の民家や宿泊地では水道の水も飲んで支障ないというのは納得できそうだ。この時期は白樺も多く、白樺の木々から覗く澄んだ川の水、そしてその向こうにそびえる穂高連邦の山々は絶景と言える。日本を離れた遠い国に来ているのではないかと錯覚させる雄大さだ。

上高地

周辺はクマやサルも生息し、完全に野生の場所のように見えるが、ハイキング、ウォーキングの観光客も多く、管理されている山道なので、あまり危険は感じない。そのためか、歩いている人々の恰好も、本格的な登山スタイルだったり、ちょっと散歩に来たというようなラフな姿だったり、まちまちなのが面白い。またクマに出会った対策としては、ベルを鳴らしているのが良いらしく、周辺の店や宿泊所でも売っている。クマはベルの音を聞くと、人間が通って行くと認識し、近づいて来ないらしい。クマが人間を襲うということはまずないそうだが、もしクマに遭遇したら目を見て、背中は見せず前を向いたままに自然に離れて行くのがよいと説明された。今回は残念ながら、クマの姿さえ見ることはなかったが、サルの集団には遭遇した。

上高地

サルに関しては目を合わせてはいけないそうだが、そもそもこちらも人間を襲って来ることはない。印象的だったのは、赤ちゃんザルを抱えた親ザルが数匹いたことだ。ただ、赤ちゃんザルの生存率は高くなく、大人になれるのは限られた数というので淋しくはある。

上高地

次に進むのは大正池方面。この池も梓川の中流にあり、透き通った川の水が一段と澄み渡って、広い池を雄大かつ神聖な景色にしている。この大正池はその名の通り、1915年(大正4年)、穂高連峰の一つ・焼岳の噴火で梓川がせき止められてできたというから、まだ100年足らずの新しい池である。こちらは河童橋近辺より、若干ハイキング的イメージが強い道だ。川沿いではあるが、道を見るとつい登山の気分になってしまう。またここではマガモの姿が多く見られ、魚ではイワナが生息している。

上高地

上高地の中心地から足を延ばし、今度は新穂高の地区へ移動。ここにはこの上高地で唯一の「鉄道」と言えるロープウェイがある。あくまでこの地域内の移動ではあるが。
新穂高温泉駅からしらかば平駅、そしてしらかば平駅から西穂高口駅までの、2段階の路線になっている。新穂高温泉からは約4分で、中腹のしらかば平まで移動できる。地上からゴンドラまでの高さはかなりあり、加えてロープを支える鉄塔通過時の揺れが少々スリルある。

上高地

しらかば平には銭湯があるほか、山道をミニハイキングしながらクイズを解き、またスタンプラリーをするエンターテイメントも用意されている。ここでもクマは生息するらしく、山道の所々にクマ除けのベルが設置してある。クマ除けのベルは、登山に慣れた人なら自前で持っている人も多い。ただ、ここでもクマの姿を見ることはなかった。尤も、これだけベルを鳴らしていたら、向こうも敬遠して離れて行ってしまうのだろうか。
しらかば平でハイキングを終えると、今度は山の頂・西穂高口まで行くロープウェイに乗る。

上高地

ここでは珍しい2階建てのゴンドラが運航されている。2階建てだからなのか、定員は45名と気前が良い。最終地点、標高2,156メートルの西穂高口のメインは展望台。ここでは周囲の山々が360度見渡すことができる。特筆すべきは郵便ポスト。ここにある旧型ポストは、日本最高地にあるポストとして知られている。

上高地

山々の雄姿を後に、名残惜しくも再びロープウェイで山を下りる。8月は18時を過ぎてもまだ西日が差しているが、日が沈むと夜は早い。そしてここ上高地では星空も美しい。はずではあったが、あいにく雲に覆われ、星空満点の空を拝むことはできなかった。しかしそれでも都会とは違う清閑な夜空に心が惹かれる。わずかながら、宇宙に近づいたような気持ちになれる、そんな夜が、また清々しい朝につないでくれた。

(文・写真 宮島永太良)

 
 
 
Copyright © 2010- Eitaroh Miyajima. All Rights Reserved.