TOPTalk : 対談

今夏、マイティサミット20周年を迎えたロコ・サトシさんが宝島を語った! 後編

 
 

ロコ・サトシさん プロフィール

アーティスト。
愛媛県宇和島市生まれ、横浜在住。
1970年代後半から桜木町の高架下で壁画を描き始めた日本ウォールペイントの草分け的存在。1989年の横浜博覧会では最大級パビリオンのペイントを行う。以後、自身の制作活動と同時に子ども向けワークショップや絵本の執筆など、アートで多岐にわたり活動。1989年から5〜6年間、日米を往復しながら作品制作、アメリカ西海岸サンディエゴのバルボアパーク・カルチャーセンターには数多く作品が残され、2018〜19年には現地で個展開催。2013年からは個人活動に加え、横浜をベースにしたアーティストグループArt-Qを主宰。2018年には画業40年を迎え、コロナ禍の現在も精力的に活動中。2022年秋には、鹿児島県鹿児島郡十島村宝島で世界的にも大規模な壁画を制作開始する。

 


月刊宮島永太良通信編集部
(以後Q):次は、この秋からの始まる宝島での壁画制作についてお話しください。まず、舞台になる宝島はどこにあるのでしょうか?
ロコ・サトシさん(以後A):宝島は鹿児島県鹿児島郡十島村にあるトカラ列島の有人島のひとつ。名のとおり、かつてイギリスの海賊/キャプテンキッドが財宝を隠したという言い伝えがあり、隠し場所とされる鍾乳洞もあるとか。加えて自然豊かで田畑や牧場もあり、周囲は14km弱、美しいエメラルドグリーンの海に囲まれているそうだよ

Q:宝島の人口は?
A:人口120人で小中学生が20人。壁画制作の担当窓口は10数年前に移住してきた人たち。全員アーティストで、以前から俺のことを知っていて、それで今回、白羽の矢がたったみたい。

 

※写真はイメージです

Q:壁画はどちらからの依頼で、何時から何処に描くのでしょう?
A:鹿児島県離島プロジェクトのひとつで、依頼は、一般社団法人 宝島さん。制作期間は、今年10月中旬頃から半年くらいを予定しているけれど、俺の気持ちが乗れば3~4ヶ月で完成すると思う。まだ現地を見ていないけど、聞いた話によれば、壁画を描くのは、フェリーや船が着く港近くにあるモルタルに覆われた崖。その辺りには毒蛇のハブもいっぱい生息しているそうだから、かなり注意しながら描き進めなければいけないだろうな(笑)。

Q:壁画は、どれくらいの面積になるのでしょう?
A:全幅は、112.4m、最高壁が14.7m。大体マンション5階建てぐらいだから、描く面積としては世界最大級かな。ギネス記録も夢じゃないけれど、アーム車を使って描くので、その免許も取得しないといけないから、いつもの壁画制作とは一味違うね。

Q:アームの免許取得は大変そうだし、5階建てマンションはかなり大きいですね。ロコさんは、これまでも大きな壁画を描いたことはありますか?
A:あるよ。国内だと、横浜そごうの裏の工事フェンス3m×600mに4年がかりで描いたし、北海道千歳市の工業団地にある日清製菓のビルの壁面13〜14m×60mには、足場を組んで描いた。あと海外ではサンディエゴやメキシコでも描いているよ。

 

Q:では、実際にはどうやってそんなに大きな壁画を描くのでしょう?
A:普通なら広く白い壁面に下絵を描いて進めるんだろうけれど、俺はいっさい何も考えず、自分のスピリッツが定まったら、そこを中心にして描き始める。でも、それ以前に俺にとっての大切なルーティンがあるんだ。

Q:大切なルーティンとは?
A:描く地を自分の肌で知ったうえで、描き手である俺を地元に一定程度認めてもらえるような動きをするんだ。例えば、かつて表参道の同潤会アパートに壁画を描いた時、期限は1週間だったけれど、俺は最初の5日間、現地には行くけれど筆はとらず、道行く人を眺め、吹く風を感じていた。で、依頼する側はかなり心配していたけれど、残りの2日間でキッチリ描き上げたよ(笑)。とにかく時間が許す限り描く場所を観察し、自分自身がささやかでも一体感を得られないと、俺は筆を持てないんだ。

 

Q:宝島でも同じルーティンをするのですか?
A:うん、するよ。最初の1週間から10日間は現地での打合せもあると思うけれど、女神山をはじめ島中を巡りつもりでいる。あと宝島って、鹿児島と沖縄の間の島だから精霊が必ずいると思うから無視できない。だから、必ず島の守り神を探し、彼らの邪魔をするのでなくサポートするために俺が島へやって来たを分かってもらおうと思っているんだ。とにかく地に馴染む、それが1番大切。そして、自分がそこの土の一欠片になることが大事。これは、敬愛する山羊先生の教えでもあるんだ。

Q:確かに大切なルーティンですね。で、壁画には何を描きますか?
A:「レインボーウォリアー=虹の戦士」。昔、サンディエゴで描いていた頃、友人でネイティブ・アメリカンの子孫であるルーベンからソルジャーとウォリアーの違いと聞いた。それによると、ソルジャーは軍隊の兵士、ウォリアーは自然や人々を守る戦士だそう。そして、「虹」は平和の象徴。つまり「レインボーウォリアー=虹の戦士」とは、俺自身がなりたい理想像なんだ。だからそれをメインに描き、宝島と横浜を結ぶだけでなく、「アートで平和の大切さ」を広く世界に向けて発信するつもりでいる。

Q:今日はありがとうございました。ハブに気をつけて素敵な壁画を完成させてください。

     

終わり

 

(構成・撮影 関 幸貴)

 
 
 
 
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