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連載69回 悲しき怒涛

悲しき怒涛

 
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今年もこの時期が来てしまった。
私の相棒に風神というのがいるが、
そいつがまた張り切っている。
「おい、雷神、今年もまた暴れるぞ!」
そう言って奴は毎年、
この私を誘って年に一回の大暴れをはじめる。
もちろんそれは我々に与えられた任務なので、
やらないわけにはいかない。

私はその昔から、天上で電気なるものを作り、
地上にばらまいてきた。
地上の者たちはそれにより私のことを恐れ、
ある時は命さえ落とすこともあったが、
私のことを恨みはしなかった。
そればかりか最近は、地上でよりよく生きるために、
私の電気をうまく使いこなしているようだ。

困ったのは相棒だ。
袋の中からあたりかまわず風を吹き出し、
地上の者たちの食料、すみか、ある時は命まで
逆に袋の中に吸い撮ってしまう。
「もうちょっと加減してはどうだ?」
そんな私の忠告も聞かず、奴はそれをしなければ
自分自身が無くなってしまうかのように夢中で暴れ回る。

皆から恐れられ、嫌われながら、こうして長きに亘り、
天の定めた任務を果たし続けるのは
正直言ってつらいものだ。
地上の者が賢くなればなるほど、
我々は老いぼれてくるのだから。
地上の者たちが我々を完全に
抹消してしまえるほど賢くなったとしたら、
我々も天の定めを全うできずに消えてゆくのだろうか。



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    悲しき怒涛
 

宮島永太良

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