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Road : つれtakeロード

 

直島

今年3月、宮島永太良は香川県の高松および瀬戸内海の小豆島を訪れたが、その後小豆島では、エンジェルロード(土庄町)の観光企画として、*「エンジェルナンバーガチャガチャ」(注)の販売機が設置された。ガチャガチャで出たエンジェルナンバーで占いをする趣旨のもので、宮島永太良デザインの天使のキャラクター商品も封入されている。読者の方も小豆島に行かれた際は、ぜひエンジェルロードの訪問と、このガチャガチャで運勢を占ってみていただきたい。

小豆島

小豆島を中心に、これからも宮島の作品が瀬戸内で観られる機会も出てきそうな中、今回は瀬戸内海の島の一つ・直島の訪問をお伝えしたい。
直島は香川県ではあるが、岡山に近いあたりに位置している。約50年前、三菱金属鉱業の新製錬所となっていたため、一時期は工場の煙によって山が禿げるなどの状態も続いていたが、近年は植栽も進んでいるようだ。観光地としては、それ以前から国立公園・キャンプ場の設立など、その兆しはあったようだが、1980年代になってから、直島町と福武書店経営者との間で本格的なリゾート開発が進められて行った。以前から存在したキャンプ場は、新たに安藤忠雄氏の建築を中心とした文化・芸術の中心地域として生まれ変わり、さらに90年代には「ベネッセハウス」が設立、美術館を中心にしたホテルリゾートができたことで、国際的な観光地となって現在にいたっている。「ベネッセハウス」はホテルの他、近隣の美術館をめぐることができる。

直島

そんな「アートの島」として認知された直島。島の玄関である四国汽船宮浦港につくと、まず草間弥生氏作の、大きなカボチャのオブジェがいくつか目に入る。人(特に子供)が中に入れて遊べるタイプのものもある。こうして大きな草間カボチャが並ぶのをあらためて見ると、不思議なことは日常的にあるという感覚になる。
島内の民家は「家プロジェクト」の名のもと、アーティストによる作品が施されている。
中でもとりわけ目を引くのは、元歯科医院だった家を改造した「はいしゃ」という建物だ。現代美術家、大竹伸朗氏が手がけたものであり、医師の自宅も兼ねていた歯科医院の建物に、当時の雰囲気を活かしながら、様々なオブジェが取り付けられている。また、中にはなぜか自由の女神像があるのが興味深い。古い素材と新しい感覚がユニークにマッチした大作品と言えるだろう。

直島

島内巡回バスに乗り、いよいよ島のメインの観光地・南部に位置するベネッセハウス方面に向かう。ベネッセハウスの敷地内には、海を望む大きな庭がある。ここも野外美術館のようで、フランスのニキ・ド・サンファールのオブジェ兼ベンチを始め、日本の茶室が透明な直方体の中に収まっている作品など、何度見ても興味深い物々で溢れている。

直島

この場所を拠点に、周辺にはベネッセミュージアム、地中美術館、ヴァレーギャラリー、李禹煥美術館といった四つの美術館が存在する。現在では観光客のために、アートの案内スタッフも控えており、宮島も男性スタッフの一人に案内してもらった。学生時代の友人にあまりにも似ていたので本人ではないかと思ったが、話を聞いているとまず名前が違う、年齢も違う、その他諸々違うことがわかり、やはり会話の大切さ、そして世の中にはそっくりな人も数人いるということがあらためてわかった次第であった。

直島

そして、まず向かったのはベネッセミュージアム。ここには内外の、現代アートの作家の作品がコンパクトにまとめられている。螺旋状の階段が特徴的である。外交をうまく取り入れ、外と中とが一体感を持った魅力ある空間だ。印象に残った作品は、ジェニファー・バートレットという作家のもので、絵の内容と同じ状況が、そのまま反対側に現実の風景となって配されているところである。絵には黄色と黒のボートの姿があるが、その180度反対側の本当の波打ち際に、実物の黄色と黒のボートがあったのには驚きだ。美術館の屋上には庭園とカフェがあり、ここから高松市の景色が遠く望むことができる。

直島

次に向かったのは李禹煥美術館。韓国の現代アート作家として日本でも親しまれている李禹煥(リ・ウーハン)氏の個人美術館である。李氏はかつて「もの派」という芸術一派に属しており、「物をできるだけそのままの形で作品化する」というそのコンセプトは、この美術館にも見て取れた。自然のままの石も、李禹煥氏がその造形性を見出したことにより、彼の作品となる訳である。また、画面いっぱいに毛筆線の集合体で構成された一連の作品も見ることができた。

直島

個人美術館から変わり、3人の作家を展示しているのが地中美術館。ここはその名の通り地中に穴を掘って作ったような作りになっている。建築はやはり安藤忠雄氏である。クロード・モネ、ジェームス・タレル、ウォルター・デ・マリアといった3名の作家の作品のみを展示し、自然光、人工光を取り入れながら、同じ作品が時とともにどう変化するかといった見せ方をしている。普通は作品を入れ替え、常に適切な採光を行なおうとするのとは逆の発想で興味深い。実際、モネの作品所有者と二人の作家は、安藤氏と意見を出し合って建設を進めてきたらしい。特にモネの作品は、宮島はかつてパリのオランジェリーに行った時のことを思い出させた。

直島

最後はヴァレーギャラリー。「谷」の英語である「valley」から名付けられている。ここで再び草間弥生が登場。こちらはカボチャでなく、アルミ製のシルバーポールが無数に池に浮かんでいる。美術館内部にもあるが、この美術館はむしろ野外展示が印象深い。面白いのは池に浮いたアルミボールがかすかにぶつかり合い、常に不思議な金属音を響かせているのが印象的だった。

直島

以上、直島のアートの数々を簡単にレポートしたが、これはほんの一部といっても過言でない。まだまだ直島とアートの関係を深く掘り下げていくことは可能である。
アート三昧を終えて、さっと自然に目を移すと、やはり瀬戸内の海と島々は美しい。海、緑、空気。自然は人間にとって最高のアートではないかと思えて来る。そんな場所だからこそ、人間が作ったアートも最大限にその魅力を発揮できるのだろう。

(文・写真 宮島永太良)

 

注)*「エンジェルナンバーガチャガチャ」:「エンジェルロード」(小豆島・土庄町)を観光客に楽しんでもらおうと、地元イベント企画会社がロード入口に設置したカプセル自動販売機「ガチャガチャ」。カプセルには天使をデザインしたコインや恋愛などの占いが入っていて、1回300円。

 
 
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